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2011/05/05

蓮丈那智フィールドファイル

『暁英』ですっかりファンになった北森鴻さん。その民俗学ミステリーシリーズが『凶笑面』、『触身仏』、『写楽・考』である。

はじめは別に読んでいた写楽関係の小説との関連で、あぁ北森さんにも写楽を扱ったものがあるんだと書店で手にとったに過ぎなかったのだが、完全にハマってしまった。

このシリーズでシャーロック・ホームズ役を演ずる蓮丈那智は東敬大学の助教授。民俗学で革新的な研究成果を発表し、歯に衣着せぬ言動で疎まれている異能の研究者である。三冊目から先に読んだものだから、「だ・である」調の会話や、ファッションが描かれないことから、てっきり男性だと思い込んでいた。ところが途中で、登場した女性と蓮丈とが似ているという話が出てきて気付いた。蓮丈那智は女性だった! 一冊目に戻ると、長身で脚もすらりと長く、薄い眉と鳶色がかった瞳が酷薄な印象を与えるが、飛びきりの美形であることが分かった。しかし髪は短く、整髪料でまとめていて、女性っぽさは微塵も感じられない。マティーニ・オンザロックを愛飲する酒豪でもある。

そして、そんな彼女のワトソン役を演ずるのが同研究室の助手、内藤三國である。徹底的に蓮丈に振り回される損な役まわりで、常識を感知しない蓮丈の尻拭いをしてまわるのが彼である。蓮丈の横にいると凡才に見えるが、蓮丈に見込まれて研究室入りを勧められたというのだから只者ではない。不思議な第六感で事件の真相に近づくきっかけを蓮丈に提供することがある。

修二会、蘇民将来伝説、だいだらぼっち、三柱の鳥居、大黒天、三種の神器、保食神と喫人、写楽とカメラ・オブスキュラ。

事件の背景に、直接・間接に民俗学のテーマが存在し、民俗学の謎を解き明かしつつ事件の真相をも解明していくというスタイルで、その展開はエンターテインメントとして大いに楽しめる。

蓮丈、三國以外にも、狐目の大学事務職員、他のシリーズの主人公である骨董屋「冬狐堂」の宇佐見陶子、研究室に途中参入する佐江由実子など個性溢れる面々が登場する。面白いのは、その彼、彼女らに対する三國の反応である。あるときは慌てふためき、あるときは困惑し戸惑い、あるときは嫉妬し、あるときは奮い立つ。

最初に読んだときには蓮丈の強い個性がこの物語に魅力を与えていると思ったが、時が経つにつれて実は三國という実に愛すべき青年こそがこの物語の支柱ではないかという思いを強くした。

キャスティングは難しそうだけれど、二時間ドラマではなく、ぜひ連続ドラマ化を期待したい。(二時間ドラマでは、2005年に「凶笑面」が木村多江さん主演で実現している。残念ながらノーチェックだったので成否の程は知らない。ただ二時間ドラマでは三國青年の良さが存分には発揮されないような気がするので、わたしとしては連続ドラマを押したいところだ。)

北森鴻著『凶笑面』『触身仏』『写楽・考』(新潮文庫, 2003-2008) 単行本は新潮社より2000年から2005年にかけて刊行。

KyoshomenShokusinbutsuSharakukou

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